2006.10.01
DT DESIGN AWARDS 2006 募集要項を発表しました。

 
 


 
「特殊と普遍」/その解説  by 黒川雅之

4.二つの普遍性・・・方法としての普遍と思想としての普遍

この40〜50年間、絶えず語られて来たデザインの概念がある。それはそれぞれの時代でそれぞれの表現がされて来た。
「定番」であり、「スタンダード」であり、「ノンデザイン」であり、「原型」であり、「普通」であり、「ユニバーサルデザイン」であり、「ノーマル」がそれである。
それらはいずれも感性だの個性だのをデザインに要求しながら、同時に祈るように探していた“永遠に変わらない、”“だれでも好む、”“人間の意図やデザインの意思を超えたところにある”製品のあり様を言っていた。
「定番」は多くを販売しながら収斂していった売れ筋の普遍的な商品をいい、「スタンダード」はその定番を求めて意識的に生み出そうとしたときの概念といえる。「ノンデザイン」の思想も当時、多く語られていた。デザインの個性は厭われてデザインをしないデザインこそ、人々が求めていると語られていた。この思想には先に述べた日本人の美意識と関係したものが感じられる。要するに,「素のまま」がいいという、自然崇拝,自然との融和感覚が生み出す感覚が背後にある。
「原型」がそのものの自然なあり方から見えてくるとすれば、「ノンデザイン」と接近した思想である。ただ,原型的なものは、その物の本来のあり方をいうのだから「普遍」に近い。「普通」にしろ「原型」にしろ「ノンデザイン」にしろ、祈るように「普遍的な物を探していること」が生み出した概念である。
深澤直人は自分の探しているデザインを「普通でちょっと違うもの」と言っている。「スーパーノーマル」とはそれを言い直しただけである。また、彼はデザインには「個性はいらない」とも言っている。
ここに見るものは苦渋に満ちて求めている「普遍的なもの」なのであろう。
この長い歴史の背景には、一つは「量産というものがもたらした標準からの脱出と自分だけのもの」への回答探しであり、もう一つは「思想としての普遍を知る日本人ならではの、ものの普遍的な存在への期待」がある。前者は「カスタマイズ」や「ユニバーサルデザイン」や、多品種少量生産や手作り産業で曲がりなりにも実現するものであり「方法としての普遍」である。そして後者は「哲学的に追求され、個性的なデザインさえも否定しないところで見えてくる」ものであり、「思想としての普遍」と言えよう。
今,求められているのはこの二つの普遍の総合的な回答である。