2006.10.01
DT DESIGN AWARDS 2006 募集要項を発表しました。

 
 


 
「特殊と普遍」/その解説  by 黒川雅之

7.特殊の中に普遍がある・・・特殊の中だけに普遍がみえる

「八つの日本の美意識」(講談社)を書いたのだが、人の意見を集めたのではない、自分自身を観察して自分の中にある日本人としての美意識を読み取っただけである。自分の中にこそ他者がいる。これは自分の中に普遍性があることを意味している。自分の中だけに普遍的な思想を見ることが出来るのである。
普遍的なデザインを発見する近道は自分のためだけのデザインであったのである。「特殊と普遍」は「自分という特殊な人、ここという特殊な場所、今という特殊な時に普遍性が潜んでいる」ことを意味している。
「一期一会」とは今の瞬間,ここと言う場所、この人がすべてだと言うことである。永劫の時間や宇宙的な空間や人類のすべてがこの一点に集約されていることを意味している。
社会は自分の外にはない。自分の意識の中に社会性としてある。東京は、空からの鳥の眼からだけで見えるのではない。今見える、この見える範囲の東京が東京なのである。この小さな東京の部分に東京のすべてが濃縮されている。過去から未来への長い時間は虚像でしかない。今という瞬間には過去が記憶として閉じ込められていてその今の瞬間に予兆や夢が未来としてある。今という瞬間こそ時間のすべてなのである。
人類を知る唯一の方法は一人の人を知ることである。一人の人の中に永い人類の歴史が遺伝子としてある。人とは何かは沢山の人を集めて調べることでは得られないのである。情報は外にはなく内にある。
東京は人の目線に身体感覚としてあり、人はその心の中にその人がいる。
人類を愛することとは目の前の一人の人を愛することである。今という一瞬を愛せずに時間を愛することは出来ない。
人間とは何かを知るためには人類を考えても見つからないように、普遍を探すためには普遍を直接、探っても見えてはこない。人類を知るために一人の人を探るように、普遍を知るためには、たった一人のための特殊を探ることである。
「特殊から普遍を探す」とはこのことを言っている。「特殊の中にこそ普遍がある」のである。