ネクストマルニプロジェクト委員会+デザイントープ
1928年からもう79年にわたって木製家具を製造販売してきたマルニはこれまでの事業の考え方を一新した新しい家具事業を始めることになりました。その商品として、「椅子のデザイン」を募集します。
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日本の8つの美意識  by 黒川雅之
4.単純化すると豊かになる/負

単純さによってこそ本当の豊饒さを表現できるという思想である。ミース・ファン・デル・ローエなどの近代デザインの原理の一つである「LESS IS MORE」という表現はこの日本の思想から学んだものではないかと思われる。無を何もないと考えず多様さが潜んでいると考えるのである。
日本の美意識には形の華麗さより質感の充実を求める傾向がある。和紙や土壁や畳など数奇屋の美意識は単純な形態と充実した質感である。着物も色彩や織絢などの微細な質感が重視されていて着物のかたち自体は全く標準化されている。
表現を削ぎ落として単純化しているのだが、そこには微細な部分への意識の集中がある。茶道のティーマスターである、千利休は客を迎えるのに朝顔の一輪のみを残して咲き乱れるすべてを切り取ってしまったという。ここにも削除することで鮮烈な表現ができると考えているように見える。
日本人の感覚は微細な細部に神髄があり、世界の全体が濃縮されていると考えている。削除することでこの微細なものの中に潜む壮大な力を開放するのである。
(*千利休/当時の武士階級のトップであった豊臣秀吉に茶道を教えた堺の商人で茶人。数奇屋は武士階級への反抗のメッセージであったと考えられる)

箱型の空間はその窓を削って広げていくと柱梁の空間になる。壁構造はラーメン構造と連続性を持っているのである。日本の木造家屋の空間は壁型のヨーロッパの石造の建築と比較すると、壁を削り取って生まれた柱梁の空間である。
削り取られて生まれた柱梁の空間の外周に明かり障子という木と紙でできた外壁が設けられている。開閉可能な開放的な仮設的な壁である。床も単純な板床か畳の床であり、家屋は極度に少ない要素でできている。
黒川雅之のデザインによる、茶道のための水差しである。シリコン製で伝統的な茶道の美意識に反逆した作品なのだが、日本の伝統的な食材である豆腐のように微細な質感を重視して形態は単純にしている。「破」の美意識も含まれている。